(備忘録)⑫超弦理論と多元宇宙(マルチバース)
※これは、とあるDiscord内の勉強会で議論した内容の備忘録です。話の理解がまだ曖昧だったり、結論が出ていない部分も多々あるかと思いますが、ご容赦ください。
なぜ私たちの宇宙は「この形」を選んだのか?
前回は、超弦理論が予言する高次元空間の「形」が、私たちの宇宙の物理法則を決定しているという、驚くべき話をまとめました。しかし、この高次元の「形」には、10万通り以上もの膨大な種類があるらしい、という疑問が残りました。
なぜ、私たちの宇宙は、その中のたった一つの形を選んだのでしょうか?
この問いに答えようとする中で、「多元宇宙(マルチバース)」という概念が浮上してきました。私たちの宇宙は、無数に存在する可能性のある宇宙の一つに過ぎない、という考え方です。
このマルチバースの概念は、超弦理論における「ランドスケープ(風景)」というアイデアから導き出されるようです。
「ランドスケープ」という膨大な宇宙の可能性
勉強会で聞いた話では、超弦理論が描く「ランドスケープ」とは、高次元のさまざまな形状(カラビ・ヤウ多様体など)が、それぞれ異なる物理法則を持つ宇宙に対応している、というイメージだそうです。これは、まるで山あり谷ありの広大な風景画のようです。
この風景画の、ある「谷」が私たちの宇宙に対応していると考えると、他のたくさんの「谷」が、それぞれ異なる物理法則を持つ別の宇宙に対応している、と考えることができます。物理学の世界では、この「谷」を真空状態(Vacuum State)と呼び、それぞれの谷が、私たちの宇宙とは異なる物理定数や素粒子の種類を持つ宇宙を意味するらしいです。
超弦理論の計算上、この谷(真空状態)が10の500乗個以上も存在する可能性がある。
という、途方もない数の宇宙の可能性が示唆されているそうです。つまり、私たちの宇宙の物理法則は、この膨大な数の選択肢の中から、たまたま選ばれた「特定の谷」にすぎないのかもしれません。
宇宙のインフレーションとマルチバース
このマルチバースの概念は、宇宙の始まりであるビッグバン直後の「インフレーション」という急激な膨張のモデルとも関係があるようです。
インフレーションのモデルによっては、宇宙が一つだけでなく、泡のように無数の宇宙が生成され続けている、という考え方があります。このそれぞれの「泡宇宙」が、超弦理論のランドスケープにおける「谷」に落ち着くことで、それぞれ異なる物理法則を持つ宇宙が生まれる、というシナリオです。
この考え方からすると、宇宙の物理法則が「私たち人間が誕生するのに都合が良い」値になっているように見えるのは、単にそのような宇宙に私たちが存在しているからだ、という「人間原理」的な説明も可能になります。
まとめと今後の課題
今回の勉強会で、超弦理論が予言する高次元の形状が、膨大な数の宇宙の可能性「ランドスケープ」を生み出し、それが「多元宇宙(マルチバース)」という概念に繋がっていることを知りました。
この考え方には、まだ多くの課題が残されています。例えば、どうすればこの他の宇宙を観測できるのか?といった実証的な問題です。しかし、原子から素粒子、そして「ひも」というたった一つの存在から、宇宙全体の物理法則や、無数の宇宙の可能性が議論されることに、私は改めて物理学の奥深さを感じています。
このシリーズもいよいよ終わりに近づいてきましたが、次回は、この「備忘録シリーズ」の総まとめとして、これまでの議論を振り返り、改めて「時間とは何か?」という問いに、私なりの結論を出してみたいと考えています。
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