(備忘録)⑥時間と対称性:終わりはあるのか?
※これは、とあるDiscord内の勉強会で議論した内容の備忘録です。話の理解がまだ曖昧だったり、結論が出ていない部分も多々あるかと思いますが、ご容赦ください。
なぜ時間には向きがあるのか?
前回の記事で、重力と量子論の統合という壮大なテーマについて触れました。今回の勉強会では、少し原点に戻って、私たちが最初に議論した「時間」について、もう一度考えてみました。
物理の法則には、時間の向きを逆にしても成り立つ「時間反転対称性」があることが多いと聞きました。しかし、私たちが経験する時間の流れは明らかに一方通行です。例えば、割れたコップが自然に元に戻ることはありません。この矛盾は、どこから来るのでしょうか?
この矛盾は、宇宙の始まりである「ビッグバン」という、極めて秩序だった状態から始まったことによる「対称性の破れ」なのではないか、という話が議論の中で出ました。
そして、その対称性の破れを記述するのが、熱力学の第2法則です。この法則は、孤立した系ではエントロピー(乱雑さの度合い)が常に増大することを示しています。
エントロピーが増大する方向こそが、私たちが認識する「時間の流れ」の方向なのではないかと、私は考えています。
宇宙の終焉と「熱的死」
このエントロピーの考え方でいくと、宇宙の未来はどうなるのでしょうか?
宇宙のエントロピーは常に増大し続けるため、最終的には宇宙全体が均一になり、あらゆるエネルギーや物質の動きが停止してしまう状態に到達する可能性があるそうです。この状態は「熱的死」と呼ばれています。
この「熱的死」の状態は、エネルギーの偏りがなくなり、究極的に対称な状態と考えることもできるのではないでしょうか?
そうだとすると、宇宙はビッグバンという極めて秩序だった(対称性が破れた)状態から始まり、時間の流れとともにエントロピーを増大させ、最終的には熱的死という究極に対称な状態に戻っていく、という見方もできるのかもしれません。
これは、宇宙が一度秩序を失い、再び元の対称な状態に戻ろうとする、壮大なサイクルの一部なのではないか、という個人的な考えです。
時間と情報の結びつきを再考する
ここで、前回の記事で議論した「情報」と「エントロピー」の関係も、改めて重要になってきます。「情報の消去」がエントロピーの増大を伴うというランダウアーの原理を考えると、私たちが何かを「忘れる」という行為も、宇宙全体のエントロピーを増大させている、と考えることもできるかもしれません。
私たちの記憶や、過去の出来事の記録といった「情報」が、時間の流れと共に失われていくことは、宇宙のエントロピー増大の一つの側面を担っているのかもしれない、と考えると、時間の流れがとても個人的なものに感じられます。
時間が一方通行なのは、宇宙が持つ「情報」が常に失われ、エントロピーが増大し続けているからだと考えると、少しだけ納得できるような気がします。
まとめと今後の課題
今回の勉強会では、時間の一方向性が、宇宙の始まりであるビッグバンの対称性の破れに起因するものであり、その流れはエントロピーの増大という形で記述される、という考え方を再確認しました。
しかし、この考え方にはまだ課題があります。宇宙の膨張が続いていること、そしてダークエネルギーやダークマターといった、まだ正体がよくわかっていない存在が、このエントロピーの増大にどう影響しているのか、という点です。
次回は、これらの未知の存在が、宇宙の未来、ひいては時間の流れにどう関わってくるのか、というテーマで議論を深めていきたいと考えています。
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