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相対論ノート【補足】水星の近日点移動の現象 – 第33回

相対論
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あくまで個人的にまとめたノートなので、誤っている箇所があるかもしれません。参考にする際は内容の正当性について注意してください。もし誤っている箇所があればご指摘いただけたら嬉しいです。

今回は、一般相対性理論の正しさを証明した最も有名な観測事実の一つ、「水星の近日点移動の現象」について、補足的な解説を加えていきます。

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水星の近日点移動とは

水星の近日点移動とは、水星が太陽の周りを公転する際、太陽に最も近づく点(近日点)が、少しずつ動いていく現象のことです。この移動は、太陽系の他の惑星からの重力の影響で引き起こされると長らく考えられてきました。ニュートン力学を用いて、他の惑星の重力による影響を厳密に計算すると、100年につき532秒角のずれが予測されました。

しかし、実際の観測では、100年につき575秒角のずれが観測されており、43秒角のわずかなずれが説明できませんでした。この小さな差は、19世紀の天文学者たちにとって大きな謎でした。

一般相対性理論による説明

アインシュタインの一般相対性理論は、この長年の謎を見事に解き明かしました。一般相対性理論では、太陽のような巨大な質量を持つ天体が、その周囲の時空を歪ませます。

水星は、この歪んだ時空に沿って「測地線」と呼ばれる最短経路を運動するため、その軌道は単純な楕円にはならず、近日点が移動すると考えられます。

シュワルツシルト解における測地線の方程式を解くことで、この近日点移動の角度を計算しました。その結果、以下の式で与えられる追加の近日点移動が導き出されました。

$$\Delta\phi = \frac{6\pi G M}{ac^2(1 – e^2)}$$

ここで、$G$は万有引力定数、$M$は太陽の質量、$a$は軌道の長半径、$e$は離心率、$c$は光速です。この式に実際の値を代入すると、100年につき約43秒角という、観測値と完璧に一致する値が得られました。この事実は、一般相対性理論がニュートン力学では説明できなかった現象を説明できることを示し、理論の正しさを強く裏付けるものとなりました。

まとめ

今回は、水星の近日点移動という、一般相対性理論の最も劇的な成功例の一つについて見てきました。

この現象は、天体の重力場が単なる力ではなく、時空の幾何学そのものであることを示しています。この見事な一致は、ニュートン力学からアインシュタインの理論へと物理学のパラダイムが転換する上で、決定的な役割を果たしました。

次回のノートでは、特殊相対性理論で予言された、光速を超える仮説上の粒子「タキオン」について、補足解説を加えていきます。

参考文献

記事を書くときに、部分的に参照したので載せておきます。

    1. 一般相対論入門 改訂版 : [須藤 靖 (著)]
    2. 第3版 シュッツ 相対論入門 I 特殊相対論 : [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著) ]
    3. 第3版 シュッツ 相対論入門 II 一般相対論: [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著)]
    4. 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ 1) [風間 洋一 (著)]
    5. 基幹講座 物理学 相対論 [田中 貴浩 (著)]
    6. 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎[James J. Callahan (著), 樋口 三郎 (翻訳)]
    7. これならわかる工学部で学ぶ数学 新装版: [千葉 逸人]
    8. 基幹講座 物理学 相対論: [田中 貴浩]

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