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相対論ノート#25:リーマン曲率テンソルの幾何学的意味

相対論
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あくまで個人的にまとめたノートなので、誤っている箇所があるかもしれません。参考にする際は内容の正当性について注意してください。もし誤っている箇所があればご指摘いただけたら嬉しいです。

前回は、「リーマン曲率テンソル」を共変微分の非可換性から定義しました。今回は、その定義がなぜ「時空の曲がり」を表現するのか、その幾何学的な意味をより直感的に見ていきましょう。

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閉曲線に沿ったベクトルの平行移動

リーマン曲率テンソルの物理的・幾何学的な意味を理解する上で最も有名な思考実験は、「閉曲線に沿ったベクトルの平行移動」です。

平坦な空間では、ベクトルを任意の閉じた経路(例えば、四角形)に沿って元の場所に戻すと、ベクトルは元の向きと全く同じ向きに戻ってきます。しかし、曲がった空間ではそうはいきません。

例えば、地球儀の上で北極点から出発し、経線に沿って赤道まで降ります。次に、赤道に沿って90度東に移動し、再び経線に沿って北極点に戻るとします。北極点に到着したとき、ベクトルは元の向きから90度ずれていることに気づくでしょう。この「向きのずれ」こそが、空間が曲がっていることの直接的な証拠であり、このずれの大きさを定量的に表すのがリーマン曲率テンソルなのです。

$$\Delta V^\mu = \oint dx^\nu \nabla_\nu V^\mu = \frac{1}{2} R^\mu_{\nu\rho\sigma} V^\nu \Delta S^{\rho\sigma}$$

この式は、閉曲線に沿ってベクトルを平行移動させたときのベクトルの変化量$\Delta V^\mu$が、リーマン曲率テンソル$R^\mu_{\nu\rho\sigma}$閉曲線が囲む面積$\Delta S^{\rho\sigma}$比例することを示しています。この関係から、リーマン曲率テンソルは、単位面積あたりのベクトルのずれの度合いを表現していると解釈することができます。

潮汐力(Tidal Force)とのつながり

もう一つの重要な幾何学的意味は、潮汐力(ちょうせきりょく)との関連です。平坦な空間では、2つの平行な測地線は永遠に平行なままです。しかし、曲がった時空では、2つの測地線は互いに接近したり離れたりします。この接近や離反は、リーマン曲率テンソルによって記述されます。

例えば、地球の重力場を考えてみましょう。地球に自由落下する2つの物体を考えると、それらの物体は地球の中心に向かって収束するように動きます。この測地線の収束こそが、潮汐力の正体であり、リーマン曲率テンソルがゼロでないことの物理的な現れです。

リーマン曲率テンソルがゼロであるということは、その空間が局所的に平坦であり、潮汐力が存在しないことを意味します。このことは、ブラックホール内部のような極限的な状況を除いて、「リーマン曲率テンソルがゼロである真空中のアインシュタイン方程式の解」、すなわち平坦時空へとつながっていきます。

まとめ

リーマン曲率テンソルは、単なる数学的な量ではなく、「時空の真の曲がり」を定量的に表現する物理的な量です。その幾何学的な意味は、閉曲線に沿ったベクトルの向きの変化や、測地線の収束・発散(潮汐力)として現れます。

このテンソルがゼロであるかどうかは、その時空が平坦であるか、あるいは曲がっているかを判断する上で、最も確実な指標となります。

次回のノートでは、リーマン曲率テンソルが持つ「対称性」について見ていきます。

参考文献

記事を書くときに、部分的に参照したので載せておきます。

    1. 一般相対論入門 改訂版 : [須藤 靖 (著)]
    2. 第3版 シュッツ 相対論入門 I 特殊相対論 : [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著) ]
    3. 第3版 シュッツ 相対論入門 II 一般相対論: [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著)]
    4. 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ 1) [風間 洋一 (著)]
    5. 基幹講座 物理学 相対論 [田中 貴浩 (著)]
    6. 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎[James J. Callahan (著), 樋口 三郎 (翻訳)]
    7. これならわかる工学部で学ぶ数学 新装版: [千葉 逸人]
    8. 基幹講座 物理学 相対論: [田中 貴浩]

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