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相対論ノート#22:共変微分の性質

相対論
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あくまで個人的にまとめたノートなので、誤っている箇所があるかもしれません。参考にする際は内容の正当性について注意してください。もし誤っている箇所があればご指摘いただけたら嬉しいです。

前回は、曲がった空間における「真の微分」である「共変微分」を導入しました。今回は、その共変微分が持つ、物理法則を記述する上で非常に重要な性質について詳しく見ていきましょう。

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共変微分の重要な性質

共変微分は、通常の微分とよく似た性質を持っています。これらの性質は、複雑な計算を行う際に非常に役立ちます。

1. 線形性(Linearity)

共変微分は線形性を満たします。つまり、2つのベクトルの線形結合に対する共変微分は、それぞれの共変微分の線形結合と等しくなります。これは通常の微分と同じ性質です。

$$\nabla_\mu (a V^\nu + b W^\nu) = a \nabla_\mu V^\nu + b \nabla_\mu W^\nu$$

ここで、$a$と$b$は定数、$V^\nu$$W^\nu$はベクトルです。

2. ライプニッツ則(Leibniz Rule)

共変微分は、テンソルの積に対してもライプニッツ則(積の微分法)を満たします。これは、共変微分がテンソルの積を「正しく」微分できることを意味します。

$$\nabla_\rho (T^{\mu\nu} S_\lambda) = (\nabla_\rho T^{\mu\nu}) S_\lambda + T^{\mu\nu} (\nabla_\rho S_\lambda)$$

この性質は、複雑なテンソル方程式を共変微分する際に非常に重要となります。通常の微分と全く同じように、積の微分法を適用することができます。

3. 計量テンソルに対する共変微分

この性質が最も重要です。計量テンソルの共変微分は、常にゼロになります。

$$\nabla_\lambda g_{\mu\nu} = 0$$

これは、「測地線」の概念と深く結びついています。測地線は、計量テンソルによって定義される時空における「真っ直ぐな道」でした。共変微分が計量テンソルをゼロにするということは、共変微分が、時空の幾何学(計量テンソル)を壊すことなく、テンソルを微分できることを意味しています。つまり、曲がった空間においても、長さや角度といった幾何学的な構造が保存されることを保証しているのです。

この性質を「共変微分が計量と両立する」と表現することもあります。この性質が成り立つからこそ、私たちは一般相対性理論において、共変微分を使って物理法則を記述することができるのです。

まとめ

共変微分は、通常の微分と異なり、基底ベクトルの変化を補正する項を含むことで、曲がった空間においてもテンソルを「真に」微分するためのツールです。そして、線形性ライプニッツ則といった通常の微分の性質を満たすだけでなく、計量テンソルをゼロにするという、時空の幾何学と整合性を持つという強力な性質を持っています。

次回のノートでは、これらの性質を使って、「共変微分の発散」について見ていきます。

参考文献

記事を書くときに、部分的に参照したので載せておきます。

    1. 一般相対論入門 改訂版 : [須藤 靖 (著)]
    2. 第3版 シュッツ 相対論入門 I 特殊相対論 : [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著) ]
    3. 第3版 シュッツ 相対論入門 II 一般相対論: [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著)]
    4. 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ 1) [風間 洋一 (著)]
    5. 基幹講座 物理学 相対論 [田中 貴浩 (著)]
    6. 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎[James J. Callahan (著), 樋口 三郎 (翻訳)]
    7. これならわかる工学部で学ぶ数学 新装版: [千葉 逸人]
    8. 基幹講座 物理学 相対論: [田中 貴浩]

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