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相対論ノート#17:リッチテンソル、アインシュタインテンソル、そしてアインシュタイン方程式

相対論
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あくまで個人的にまとめたノートなので、誤っている箇所があるかもしれません。参考にする際は内容の正当性について注意してください。もし誤っている箇所があればご指摘いただけたら嬉しいです。

前回は、時空の曲がりを定量的に表す「リーマン曲率テンソル」について纏めました。

今回は、そのリーマン曲率テンソルをさらに単純化して得られる「リッチテンソル」「アインシュタインテンソル」を経て、ついに「アインシュタイン方程式」へとたどり着きます。ここからは、いよいよ物質と時空の曲がりがどう結びつくのか見ていきましょう。

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リッチテンソル(Ricci Tensor)の導出と物理的意味

リーマン曲率テンソル$R^\mu_{\nu\rho\sigma}$は4階のテンソルであり、1つの成分を導出するだけでも非常に複雑な計算が必要です。

そこで、このテンソルを簡潔にするために、「縮約」という操作を行います。リーマン曲率テンソルの上付き添え字と下付き添え字をペアにして和を取ることで、2階のテンソルである「リッチテンソル」$R_{\nu\sigma}$を導出します。

縮約の過程は以下の通りです。

$$R_{\nu\sigma} = R^\mu_{\nu\sigma\mu}$$

これは、リーマン曲率テンソルの$\mu$$\sigma$という添え字をペアにして和を取ることを意味します。このリッチテンソルは、時空の体積がどのように変化するか(体積歪み)を表す、重要な物理的意味を持っています。平坦な空間では、このリッチテンソルはゼロになります。

ところで、アインシュタインの縮約規則は非常に便利ですが、その本質を理解するためには、あえて縮約記法を使わずに式を書いてみると分かりやすいです。

例えば、2階の反変テンソル$T^{\mu\nu}$と、2階の共変テンソル$S_{\mu\nu}$を縮約する操作は、具体的に以下のように展開されます。

$$T^{\mu\nu}S_{\mu\nu} = \sum_{\mu=0}^{3} \sum_{\nu=0}^{3} T^{\mu\nu}S_{\mu\nu}$$

この式は、$\mu$と$\nu$という2つの添え字について、それぞれ0から3までの全ての組み合わせで和を取ることを意味しています。

つまり、膨大な数の項の足し合わせです。この和を取るという操作によって、$\mu$と$\nu$という添え字は「ダミー」となり、結果として得られる量は添え字を持たないスカラー(0階のテンソル)となります。このように、縮約はテンソルの階数を2つ減らす操作であるということを、この展開された式から直感的に理解できるでしょう。

リッチスカラー(Ricci Scalar)の導出と物理的意味

リッチテンソルをさらに縮約すると、「リッチスカラー」$R$が得られます。これは、時空の曲がりを一つのスカラー量で表現したものです。

縮約の過程は以下の通りです。

$$R = g^{\mu\nu} R_{\mu\nu}$$

ここでは、リッチテンソル$R_{\mu\nu}$に、前回解説した「計量テンソル」の逆行列$g^{\mu\nu}$を掛けて和を取ることで、添え字のないスカラー量を得ています。このリッチスカラーは、時空の全体の曲がり具合を表現する量であり、平坦な空間ではゼロとなります。

アインシュタインテンソル(Einstein Tensor)の導出

いよいよ、アインシュタイン方程式を構成するための最後のピース、「アインシュタインテンソル」$G_{\mu\nu}$を導出します。

アインシュタイン方程式の右辺は、エネルギー運動量テンソル$T_{\mu\nu}$で、その共変微分がゼロとなることが知られています(保存則)。したがって、方程式の左辺も同様に共変微分がゼロとなるテンソルでなければなりません。

この性質を満たすテンソルとして、アインシュタインは以下の組み合わせを考えました。

$$G_{\mu\nu} = R_{\mu\nu} – \frac{1}{2} R g_{\mu\nu}$$

ここで、$R_{\mu\nu}$はリッチテンソル、$R$はリッチスカラー、$g_{\mu\nu}$は計量テンソルです。この組み合わせによって、「ダイバージェンスがゼロになる」という性質が満たされます。

これは、エネルギーと運動量が保存されるという物理法則を、曲がった時空においても満たすための、アインシュタインの天才的なアイデアでした。

アインシュタイン方程式(Einstein Field Equation)

すべての準備が整いました。アインシュタイン方程式は、時空の曲がり物質・エネルギーの分布を結びつける、壮大な方程式です。その最終形は以下の通りです。

$$G_{\mu\nu} = \kappa T_{\mu\nu}$$

または、より詳細に書くと、

$$R_{\mu\nu} – \frac{1}{2} R g_{\mu\nu} = \kappa T_{\mu\nu}$$

この方程式は、以下のように解釈されます。

  • 左辺($G_{\mu\nu}$時空の幾何学を表します。
  • 右辺($T_{\mu\nu}$物質・エネルギーの分布を表します。
  • $\kappa$(カッパ)アインシュタインの重力定数で、宇宙の基本的定数です。

この方程式は、「物質が時空にどう曲がり方を指示し、曲がった時空が物質にどう動き方を指示するか」という、アインシュタインの壮大なアイデアを数学的に表現したものです。この方程式を解くことで、ブラックホールや重力波といった、重力現象の様々な性質が導き出されます。

参考文献

記事を書くときに、部分的に参照したので載せておきます。

    1. 一般相対論入門 改訂版 : [須藤 靖 (著)]
    2. 第3版 シュッツ 相対論入門 I 特殊相対論 : [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著) ]
    3. 第3版 シュッツ 相対論入門 II 一般相対論: [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著)]
    4. 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ 1) [風間 洋一 (著)]
    5. 基幹講座 物理学 相対論 [田中 貴浩 (著)]
    6. 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎[James J. Callahan (著), 樋口 三郎 (翻訳)]
    7. これならわかる工学部で学ぶ数学 新装版: [千葉 逸人]
    8. 基幹講座 物理学 相対論: [田中 貴浩]

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