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相対論ノート【補足】タキオン – 第34回

相対論
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あくまで個人的にまとめたノートなので、誤っている箇所があるかもしれません。参考にする際は内容の正当性について注意してください。もし誤っている箇所があればご指摘いただけたら嬉しいです。

今回は、これまでのノートで扱ってきた一般相対性理論から少し話題を移し、特殊相対性理論の枠組みの中で議論される、光速を超える仮説上の粒子「タキオン」について補足解説していきます。

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タキオンとは

タキオン(Tachyon)は、常に光速より速く運動する仮説上の粒子です。

特殊相対性理論の運動方程式を数学的に拡張すると、このような粒子が存在する可能性が示唆されます。しかし、現代物理学では、タキオンはまだ観測されておらず、その存在は議論の対象となっています。

特殊相対性理論におけるエネルギー$E$と運動量$p$、静止質量$m_0$の関係式は以下の通りです。

$$E^2 = (m_0 c^2)^2 + (pc)^2$$

この式から、静止している($p=0$)粒子のエネルギーは$E=m_0 c^2$となり、これはおなじみの関係式です。また、光子のように静止質量がゼロの粒子は、$E=pc$となり、常に光速で運動します。では、光速を超える粒子を考えた場合、この式はどうなるでしょうか。

光速を超えるとどうなるか

光速を超える粒子を考えると、相対論的なエネルギーと運動量の式が虚数になってしまいます。この問題を回避するために、タキオンは虚数の静止質量を持つと仮定されます。すなわち、$m_0 = i|m_0|$です。この虚数の静止質量を用いると、タキオンのエネルギーと運動量の関係式は、以下のように書くことができます。

$$E^2 = -( |m_0| c^2)^2 + (pc)^2$$

この式は、タキオンの速度$v$が光速$c$より大きい場合にのみ、エネルギー$E$が実数になることを示しています。つまり、タキオンは常に光速を超えて運動しなければなりません。また、興味深いことに、タキオンはエネルギーを失うほど速度が速くなり、エネルギーがゼロになると無限の速さになります。

因果律との関係

タキオンの存在が最も大きな問題となるのは、「因果律」との関係です。光速を超えることは、ある事象の原因と結果の順序が観測者によって逆転してしまう可能性を秘めています。これは、相対性理論における「因果律の原則」、すなわち「原因は結果よりも時間的に先行する」という基本的な考え方に矛盾します。

このため、もしタキオンが存在したとしても、情報を伝達する手段として利用することはできない、あるいは何らかの物理法則によって因果律の矛盾が回避される、といった形で議論されています。現代物理学の主流では、タキオンの存在は否定的に考えられています。

まとめ

今回は、特殊相対性理論の枠組みで議論される仮説上の粒子「タキオン」について解説しました。虚数の静止質量を持つという奇妙な性質を持つタキオンは、数学的には存在を許されるものの、因果律との矛盾から、その物理的な存在は非常に懐疑的に見られています。

この考察は、「光速を超えることはできない」という相対性理論の原則の重要性を改めて示しています。

次回のノートでは、アインシュタイン方程式が予言した、時空を伝わる波である「重力波」について補足解説していきます。

参考文献

記事を書くときに、部分的に参照したので載せておきます。

    1. 一般相対論入門 改訂版 : [須藤 靖 (著)]
    2. 第3版 シュッツ 相対論入門 I 特殊相対論 : [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著) ]
    3. 第3版 シュッツ 相対論入門 II 一般相対論: [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著)]
    4. 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ 1) [風間 洋一 (著)]
    5. 基幹講座 物理学 相対論 [田中 貴浩 (著)]
    6. 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎[James J. Callahan (著), 樋口 三郎 (翻訳)]
    7. これならわかる工学部で学ぶ数学 新装版: [千葉 逸人]
    8. 基幹講座 物理学 相対論: [田中 貴浩]

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