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相対論ノート【補足】ビアンキ恒等式とアインシュタインテンソル – 第30回

相対論
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あくまで個人的にまとめたノートなので、誤っている箇所があるかもしれません。参考にする際は内容の正当性について注意してください。もし誤っている箇所があればご指摘いただけたら嬉しいです。

今回は、これまでのノートで触れてきた重要な概念について、補足的な解説を加えていきます。アインシュタイン方程式の導出に不可欠な「ビアンキ恒等式」について詳しく見ていきましょう。

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ビアンキ恒等式について

ビアンキ恒等式(Bianchi Identity)は、リーマン曲率テンソルが満たす最も重要な恒等式の一つです。この恒等式は、リーマンテンソルの共変微分を3つの添え字について巡回的に足し合わせると、常にゼロになるというものです。

$$\nabla_\sigma R^\lambda_{\rho\mu\nu} + \nabla_\nu R^\lambda_{\rho\sigma\mu} + \nabla_\mu R^\lambda_{\rho\nu\sigma} = 0$$

この恒等式は、一見すると複雑な微分方程式に見えますが、その証明は非常にシンプルです。「局所慣性系」という、特定の点においてクリストッフェル記号がゼロになる座標系を用いると、証明は大幅に簡略化されます。

局所慣性系では、共変微分が通常の偏微分と同じになるため、上の式が簡単に証明できます。この恒等式はテンソル方程式であるため、任意の座標系で成り立つことが保証されます。

ビアンキ恒等式から導かれること

ビアンキ恒等式が持つ最も重要な物理的帰結は、「アインシュタインテンソルの共変微分の発散がゼロになる」という性質です。リーマン曲率テンソルを縮約して得られるリッチテンソルやリッチスカラーを用いて、アインシュタインテンソル$G_{\mu\nu}$を定義しました。

$$G_{\mu\nu} = R_{\mu\nu} – \frac{1}{2} R g_{\mu\nu}$$

このアインシュタインテンソルが、$\nabla^\mu G_{\mu\nu} = 0$という性質を満たすことは、ビアンキ恒等式から導出することができます。

この性質は、アインシュタイン方程式の右辺に位置するエネルギー運動量テンソル$T_{\mu\nu}$が、$\nabla^\mu T_{\mu\nu} = 0$という共変的な保存則を満たすべきであるという物理的な要求と見事に整合します。この数学的整合性こそが、アインシュタイン方程式の正当性を示す重要な証拠の一つとされています。

まとめ

今回は、アインシュタイン方程式の根幹を支えるビアンキ恒等式について解説しました。この恒等式は、リーマン曲率テンソルが満たす数学的な性質であるだけでなく、物理法則としてのエネルギー運動量保存則が、時空の幾何学と矛盾なく記述できることを保証する、非常に重要な役割を果たしています。

次回のノートでは、「弱い重力場中の粒子の運動」について補足解説していきます。

参考文献

記事を書くときに、部分的に参照したので載せておきます。

    1. 一般相対論入門 改訂版 : [須藤 靖 (著)]
    2. 第3版 シュッツ 相対論入門 I 特殊相対論 : [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著) ]
    3. 第3版 シュッツ 相対論入門 II 一般相対論: [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著)]
    4. 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ 1) [風間 洋一 (著)]
    5. 基幹講座 物理学 相対論 [田中 貴浩 (著)]
    6. 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎[James J. Callahan (著), 樋口 三郎 (翻訳)]
    7. これならわかる工学部で学ぶ数学 新装版: [千葉 逸人]
    8. 基幹講座 物理学 相対論: [田中 貴浩]

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