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相対論ノート#18:アフィン接続係数と座標変換則

相対論
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あくまで個人的にまとめたノートなので、誤っている箇所があるかもしれません。参考にする際は内容の正当性について注意してください。もし誤っている箇所があればご指摘いただけたら嬉しいです。

前回は、一般相対性理論の中心的な方程式である「アインシュタイン方程式」へとたどり着きました。

今回は、その方程式を理解する上で不可欠な数学的ツールである「アフィン接続係数」と、その座標変換則について掘り下げていきます。この概念は、これまで見てきた「テンソル」とは少し異なる振る舞いをします。

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アフィン接続係数(Affinity Connection Coefficient)とは

これまでのノートで、私たちは「共変微分」の概念を導入しました。

共変微分は、曲がった空間におけるベクトルの微分を定義するためのものでした。この共変微分を行う際、クリストッフェル記号が補正項として現れました。このクリストッフェル記号こそが、計量テンソルから導出される特別なアフィン接続係数なのです。

アフィン接続係数は、時空上の2つの異なる点にあるベクトルの「方向」を比較するためのルール、すなわち「平行移動」のルールを定義します。

平坦な空間では、ベクトルをそのまま平行に移動させればよいですが、曲がった空間では、どの方向が「真っ直ぐ」なのかが自明ではありません。この「真っ直ぐ」の定義を与えるのがアフィン接続係数です。

$$\nabla_{\mu} V^\nu = \partial_{\mu} V^\nu + \Gamma^{\nu}_{\mu\lambda} V^\lambda$$

この共変微分の式を見ると、アフィン接続係数$\Gamma^{\nu}_{\mu\lambda}$は、通常の微分$\partial_{\mu}$では捉えきれない、基底ベクトルの変化を補正する役割を担っていることがわかります。

アフィン接続係数の座標変換則の導出

ここで、アフィン接続係数がなぜテンソルではないのかを、その座標変換則を導出することで確認してみましょう。まず、新しい座標系$x’^\mu$と古い座標系$x^\mu$の関係から始めます。

基底ベクトルの変換則は、以下のように書くことができます。

$$e’_\mu = \frac{\partial x^\nu}{\partial x’^\mu} e_\nu$$

ここで、$e_\mu$は古い座標系の基底ベクトル、$e’_\mu$は新しい座標系の基底ベクトルです。次に、この新しい基底ベクトルを通常の微分で微分してみましょう。

$$\frac{\partial e’_\mu}{\partial x’^\nu} = \frac{\partial}{\partial x’^\nu} \left( \frac{\partial x^\rho}{\partial x’^\mu} e_\rho \right)$$

右辺の微分には積の微分法を適用します。また、偏微分を連鎖律を使って古い座標系での微分に書き換えます。

$$\frac{\partial e’_\mu}{\partial x’^\nu} = \frac{\partial x^\sigma}{\partial x’^\nu} \frac{\partial}{\partial x^\sigma} \left( \frac{\partial x^\rho}{\partial x’^\mu} e_\rho \right)$$

積の微分法を適用すると、

$$\frac{\partial e’_\mu}{\partial x’^\nu} = \frac{\partial x^\sigma}{\partial x’^\nu} \left( \frac{\partial^2 x^\rho}{\partial x^\sigma \partial x’^\mu} e_\rho + \frac{\partial x^\rho}{\partial x’^\mu} \frac{\partial e_\rho}{\partial x^\sigma} \right)$$

ここで、アフィン接続係数の定義$\frac{\partial e_\rho}{\partial x^\sigma} = \Gamma^\lambda_{\rho\sigma} e_\lambda$を代入します。

$$\frac{\partial e’_\mu}{\partial x’^\nu} = \frac{\partial x^\sigma}{\partial x’^\nu} \left( \frac{\partial^2 x^\rho}{\partial x^\sigma \partial x’^\mu} e_\rho + \frac{\partial x^\rho}{\partial x’^\mu} \Gamma^\lambda_{\rho\sigma} e_\lambda \right)$$

さらに、新しい座標系での基底ベクトルの微分もアフィン接続係数で書くことができます。$\frac{\partial e’_\mu}{\partial x’^\nu} = \Gamma’^\lambda_{\mu\nu} e’_\lambda$ です。この式に、$e’_\lambda = \frac{\partial x^\tau}{\partial x’^\lambda} e_\tau$を代入すると、

$$\frac{\partial e’_\mu}{\partial x’^\nu} = \Gamma’^\lambda_{\mu\nu} \frac{\partial x^\tau}{\partial x’^\lambda} e_\tau$$

最初の式とこの式を比較し、係数を揃えるために添え字を整理すると、最終的な変換則が得られます。

$$\Gamma’^\lambda_{\mu\nu} = \frac{\partial x’^\lambda}{\partial x^\rho} \frac{\partial x^\sigma}{\partial x’^\mu} \frac{\partial x^\tau}{\partial x’^\nu} \Gamma^\rho_{\sigma\tau} + \frac{\partial x’^\lambda}{\partial x^\rho} \frac{\partial^2 x^\rho}{\partial x’^\mu \partial x’^\nu}$$

導出結果の物理的意味

この複雑な式が示す最も重要な点は、第二項の存在です。もしアフィン接続係数がテンソルであれば、第二項は存在せず、単純にヤコビ行列の積で表されるはずです。しかし、この第二項は座標系の曲がり具合、すなわち基底ベクトルの向きが変化する度合いに依存しています。

これは、アフィン接続係数が物理的な量そのものではなく、特定の座標系に依存して定義される幾何学的な量であることを意味します。したがって、アフィン接続係数自身は物理的な実体ではなく、「曲がった空間におけるベクトルの向きのずれ」を補正するための数学的なツールと考えるのが適切です。

次回のノートでは、このアフィン接続係数の概念を使って、「等価原理」を数学的に表現する方法を見ていきましょう。

参考文献

記事を書くときに、部分的に参照したので載せておきます。

    1. 一般相対論入門 改訂版 : [須藤 靖 (著)]
    2. 第3版 シュッツ 相対論入門 I 特殊相対論 : [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著) ]
    3. 第3版 シュッツ 相対論入門 II 一般相対論: [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著)]
    4. 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ 1) [風間 洋一 (著)]
    5. 基幹講座 物理学 相対論 [田中 貴浩 (著)]
    6. 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎[James J. Callahan (著), 樋口 三郎 (翻訳)]
    7. これならわかる工学部で学ぶ数学 新装版: [千葉 逸人]
    8. 基幹講座 物理学 相対論: [田中 貴浩]

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