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相対論ノート#15:測地線とクリストッフェル記号

相対論
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あくまで個人的にまとめたノートなので、誤っている箇所があるかもしれません。参考にする際は内容の正当性について注意してください。もし誤っている箇所があればご指摘いただけたら嬉しいです。

前回は、一般相対性理論において最も重要な「計量テンソル」について解説しました。今回は、その計量テンソルによって曲がった時空で、物体がどのように運動するかを記述するための鍵となる概念、「測地線」「クリストッフェル記号」について見ていきましょう。

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測地線(Geodesic)とは

一般相対性理論では、重力を「力」として捉えるのではなく、「時空の歪み」として考えます。そして、この歪んだ時空の中を、自由落下する物体(例えば、宇宙空間を漂う衛星や、地球に落ちるリンゴ)は、「真っ直ぐな道」を進んでいると解釈します。この、曲がった時空における「真っ直ぐな道」のことを「測地線」と呼びます。

分かりやすい例は、地球の表面です。地球儀の上で2点間の最短距離を測る場合、私たちは直線ではなく、大円(great circle)という円弧を描きます。この大円こそ、球面上での「測地線」なのです。同様に、重力源の近くで曲がって見える物体の軌道は、実際には歪んだ時空における「真っ直ぐな測地線」を辿っているにすぎません。

クリストッフェル記号(Christoffel Symbol)

では、その「真っ直ぐな道」である測地線を数学的にどう表現すればよいでしょうか?ここで登場するのが「クリストッフェル記号」です。

クリストッフェル記号は、曲がった座標系における基底ベクトルの変化率を表す数学的なツールです。

平坦な空間では、直交座標系の基底ベクトル(x, y, z方向の単位ベクトル)はどの点でも同じ方向を向いています。

しかし、曲がった空間では、基底ベクトルは場所によって方向が変わります。クリストッフェル記号は、この「基底ベクトルの変化」を定量的に捉える役割を果たします。そして、この記号は、計量テンソルの成分と、その微分によって定義されます。

$${\Gamma^{\mu}}_{\nu\lambda} = \frac{1}{2}g^{\mu\rho}\left(\frac{\partial g_{\rho\nu}}{\partial x^\lambda} + \frac{\partial g_{\rho\lambda}}{\partial x^\nu} – \frac{\partial g_{\nu\lambda}}{\partial x^\rho}\right)$$

この式は少し複雑に見えますが、本質的には、「時空の歪み(計量テンソル$g_{\mu\nu}$)から、その歪みが生み出す幾何学的な性質(クリストッフェル記号)」を導き出すためのレシピです。

さらに深くクリストッフェル記号を捉えると、これは「普通の微分」と「曲がった空間での微分」との間に生じるズレを補正するための値と考えることができます。

平坦な空間では、座標系の基底ベクトルはどこでも同じなので、普通の微分で十分です。しかし、曲がった空間では、位置によって基底ベクトルが変化するため、普通の微分ではその変化分を考慮できません。このズレを補正するために登場するのがクリストッフェル記号であり、この考え方は、今後のノートで解説する「共変微分」へと繋がっていきます。

測地線方程式(Geodesic Equation)

測地線の概念とクリストッフェル記号を結びつけるのが、以下の「測地線方程式」です。これは、物体が測地線に沿って運動するための運動方程式となります。

$$\frac{d^2x^\mu}{d\tau^2} + \Gamma^{\mu}_{\nu\lambda} \frac{dx^\nu}{d\tau}\frac{dx^\lambda}{d\tau} = 0$$

この方程式は、慣性系における「$F=ma$」「$F=0$」(外力が働かない)に相当します。曲がった時空においては、左辺の第二項が「見かけ上の力(慣性力)」として機能し、その力が「真っ直ぐな道」からのずれを表現しているのです。この方程式を解くことで、曲がった時空における物体の具体的な軌道が導き出されます。

次回のノートでは、これらの数学的ツールをさらに発展させ、「共変微分」と「リーマン曲率テンソル」について纏めていきます。

参考文献

記事を書くときに、部分的に参照したので載せておきます。

    1. 一般相対論入門 改訂版 : [須藤 靖 (著)]
    2. 第3版 シュッツ 相対論入門 I 特殊相対論 : [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著) ]
    3. 第3版 シュッツ 相対論入門 II 一般相対論: [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著)]
    4. 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ 1) [風間 洋一 (著)]
    5. 基幹講座 物理学 相対論 [田中 貴浩 (著)]
    6. 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎[James J. Callahan (著), 樋口 三郎 (翻訳)]
    7. これならわかる工学部で学ぶ数学 新装版: [千葉 逸人]
    8. 基幹講座 物理学 相対論: [田中 貴浩]

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