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相対論ノート#20:ベクトルの平行移動とテンソルの平行移動

相対論
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あくまで個人的にまとめたノートなので、誤っている箇所があるかもしれません。参考にする際は内容の正当性について注意してください。もし誤っている箇所があればご指摘いただけたら嬉しいです。

前回は、「等価原理」の概念と、それを数学的に表現する上で不可欠な「アフィン接続係数」とのつながりについて見てきました。今回は、そのアフィン接続係数を使って、曲がった空間における物理量の変化を定義する上で最も基本的な操作である「平行移動」について解説していきます。

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ベクトルの平行移動(Parallel Transport)

平坦な空間(ユークリッド空間)では、ベクトルの平行移動は非常に単純です。ベクトルの向きと長さを変えずに、そのまま別の場所に移動させればよいだけです。しかし、曲がった空間では、これは自明なことではありません。例えば、地球儀の上で赤道に沿って北を向いた矢印を平行移動させると、最終的に別の経度では、その矢印は元の向きとは異なる方向を向いてしまいます。

そこで、曲がった空間では、「平行移動」を次のように定義します。「ベクトルが、移動中にその方向成分を変化させないような移動」と定義します。この定義を数学的に表現するために、アフィン接続係数が再び登場します。

位置$x^\mu$にあるベクトル$V^\mu$が、微小な移動$dx^\nu$によって位置$x^\mu + dx^\mu$に移動したとします。このとき、ベクトル$V^\mu$が平行移動していると見なすための条件は、共変微分がゼロになることです。

$$DV^\mu = \nabla_\nu V^\mu dx^\nu = (\partial_\nu V^\mu + \Gamma^\mu_{\nu\lambda} V^\lambda) dx^\nu = 0$$

この式が、ベクトルの平行移動を表す基本的な方程式となります。これは、通常の微小変化$\partial_\nu V^\mu dx^\nu$が、アフィン接続係数を含む補正項によって打ち消されることを意味します。この式を解くことで、曲がった空間におけるベクトルの具体的な軌道が導き出されます。

テンソルの平行移動

ベクトルの平行移動と同様に、テンソルの平行移動も定義することができます。テンソルの各添え字について、共変微分がゼロになるように式を立てればよいのです。

例えば、2階の反変テンソル$T^{\mu\nu}$の平行移動は、以下の式で表されます。

$$DT^{\mu\nu} = \nabla_\rho T^{\mu\nu} dx^\rho = \left( \partial_\rho T^{\mu\nu} + \Gamma^\mu_{\rho\lambda} T^{\lambda\nu} + \Gamma^\nu_{\rho\lambda} T^{\mu\lambda} \right) dx^\rho = 0$$

この式を見ると、テンソルの階数が増えるごとに、アフィン接続係数を含む補正項が増えていくことがわかります。このように、平行移動の概念を拡張することで、どんな階数のテンソルに対しても、曲がった時空における「変化しない」状態を定義することができるのです。

次回のノートでは、この「平行移動」の概念を使って、「共変微分」をさらに深く掘り下げていきます。

参考文献

記事を書くときに、部分的に参照したので載せておきます。

    1. 一般相対論入門 改訂版 : [須藤 靖 (著)]
    2. 第3版 シュッツ 相対論入門 I 特殊相対論 : [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著) ]
    3. 第3版 シュッツ 相対論入門 II 一般相対論: [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著)]
    4. 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ 1) [風間 洋一 (著)]
    5. 基幹講座 物理学 相対論 [田中 貴浩 (著)]
    6. 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎[James J. Callahan (著), 樋口 三郎 (翻訳)]
    7. これならわかる工学部で学ぶ数学 新装版: [千葉 逸人]
    8. 基幹講座 物理学 相対論: [田中 貴浩]

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