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相対論ノート#21:共変微分

相対論
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あくまで個人的にまとめたノートなので、誤っている箇所があるかもしれません。参考にする際は内容の正当性について注意してください。もし誤っている箇所があればご指摘いただけたら嬉しいです。

前回は、曲がった空間における物理量を扱う上で不可欠な「平行移動」の概念について見てきました。今回は、その平行移動の考え方を発展させ、「共変微分」の概念をより深く掘り下げていきます。

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共変微分(Covariant Derivative)とは

平坦な空間では、ベクトルの微分は単純に行うことができます。しかし、曲がった時空では、単純な微分では不十分です。なぜなら、通常の微分は、ベクトル自身の変化だけでなく、座標系の歪みによって生じる基底ベクトルの向きの変化まで含んでしまうからです。共変微分は、この「見かけ上の変化」を補正し、ベクトル自身の純粋な変化(真の微分)を抽出するための操作です。

共変微分の導出

ベクトル$V^\mu$の共変微分を、平行移動の考え方から導出してみましょう。まず、位置$x^\nu$にあるベクトル$V^\mu(x)$を考えます。このベクトルを、微小な距離$dx^\nu$だけ離れた位置$x^\nu + dx^\nu$に移動させます。移動後のベクトルは$V^\mu(x+dx)$となります。

ここで、もしベクトルが平行移動していると仮定した場合、そのベクトルを$V^\mu_{parallel}(x+dx)$と書くことにします。平行移動の定義より、このベクトルの変化はゼロ、つまり$V^\mu_{parallel}(x+dx) – V^\mu(x) = 0$となります。

しかし、実際のベクトル$V^\mu(x+dx)$は、必ずしも平行移動しているとは限りません。共変微分は、この「実際のベクトルの変化」「平行移動による変化」の差分として定義されます。

$$(\text{共変微分}) = \frac{V^\mu(x+dx) – V^\mu_{parallel}(x+dx)}{dx^\nu}$$

ここで、$V^\mu(x+dx)$はテイラー展開で近似することができます。

$$V^\mu(x+dx) \approx V^\mu(x) + \frac{\partial V^\mu}{\partial x^\nu} dx^\nu$$

また、平行移動したベクトルの成分$V^\mu_{parallel}(x+dx)$は、アフィン接続係数を使って書くことができます。前回解説した平行移動の定義から、

$$V^\mu_{parallel}(x+dx) – V^\mu(x) = – \Gamma^\mu_{\nu\lambda} V^\lambda dx^\nu$$

これを変形して、

$$V^\mu_{parallel}(x+dx) = V^\mu(x) – \Gamma^\mu_{\nu\lambda} V^\lambda dx^\nu$$

となります。この2つの式を最初の共変微分の定義に代入すると、

$$\frac{V^\mu(x) + \partial_\nu V^\mu dx^\nu – (V^\mu(x) – \Gamma^\mu_{\nu\lambda} V^\lambda dx^\nu)}{dx^\nu}$$

となり、整理すると以下の共変微分の定義式が得られます。

$$\nabla_\nu V^\mu = \partial_\nu V^\mu + \Gamma^\mu_{\nu\lambda} V^\lambda$$

この式は、「通常の微分($\partial_\nu V^\mu$)」に、「基底ベクトルの変化を補正する項($\Gamma^\mu_{\nu\lambda} V^\lambda$)」を加えることで、真の微分を抽出していることを示しています。この共変微分は、どのような座標系で計算しても同じ物理的意味を持つ結果(テンソル)を返します。これが、一般相対性原理を数学的に記述するための鍵となります。

様々なテンソルの共変微分

共変微分は、反変ベクトルだけでなく、共変ベクトルや、より高階のテンソルにも適用できます。その際、添え字の位置によって、補正項の符号が変わることに注意が必要です。

  • 共変ベクトルの共変微分
$$\nabla_\nu V_\mu = \partial_\nu V_\mu – \Gamma^\lambda_{\nu\mu} V_\lambda$$
  • 2階の反変テンソルの共変微分
$$\nabla_\rho T^{\mu\nu} = \partial_\rho T^{\mu\nu} + \Gamma^\mu_{\rho\lambda} T^{\lambda\nu} + \Gamma^\nu_{\rho\lambda} T^{\mu\lambda}$$

このように、共変微分はテンソルの種類に応じて、その定義が拡張されます。これは、全ての物理法則をテンソル方程式で記述できるという、一般相対性理論の強力なツールとなります。

参考文献

記事を書くときに、部分的に参照したので載せておきます。

    1. 一般相対論入門 改訂版 : [須藤 靖 (著)]
    2. 第3版 シュッツ 相対論入門 I 特殊相対論 : [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著) ]
    3. 第3版 シュッツ 相対論入門 II 一般相対論: [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著)]
    4. 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ 1) [風間 洋一 (著)]
    5. 基幹講座 物理学 相対論 [田中 貴浩 (著)]
    6. 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎[James J. Callahan (著), 樋口 三郎 (翻訳)]
    7. これならわかる工学部で学ぶ数学 新装版: [千葉 逸人]
    8. 基幹講座 物理学 相対論: [田中 貴浩]

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