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物理の全体像:究極の統一理論「弦理論」の登場
前回は、ミクロな世界を記述する数学、非可換幾何学と非整数階微分について見てきました。これらの数学は、私たちが当たり前だと思っている「時空は滑らかである」という前提が、ミクロなスケールでは崩れることを示唆しています。 今回は、この矛盾を解決し、宇宙のすべての力を一つの理論で説明しようとする試み、弦理論について解説します。(”ゆいにっき”では何回か触れてますが…)相対性理論と量子力学の不協和音
一般相対性理論は、宇宙のような巨大なスケールで重力と時空の歪みを完璧に説明します。一方、量子力学は、原子や素粒子といった極めて小さなスケールで、電磁気力、強い力、弱い力の3つの力を説明します。 しかし、ブラックホールの中心にある特異点や、宇宙の始まりであるビッグバン直後のように、両方の理論を同時に適用しなければならない極限的な状況では、理論が破綻してしまいます。 これは、相対論が滑らかな時空を前提としているのに対し、量子力学は時空が離散的である可能性を示唆しているため、両者の相性が非常に悪いからです。 (「滑らか」は繋がっているとか連続を、「離散」は粒粒とか離れ離れを想像する相性が悪そうな感じがしませんか?)究極の統一理論「弦理論」の登場
この矛盾を乗り越え、宇宙のすべての法則を統一しようとする量子重力理論の最も有力な候補が弦理論です。 弦理論は、宇宙のすべての基本的な粒子は、従来の「点」のような存在ではなく、非常に小さな1次元の弦でできていると仮定します。この弦が、様々な周波数で振動することで、電子や光子、さらには重力子(重力を伝える仮想的な粒子)など、様々な種類の素粒子が生まれると考えます。 弦には、両端が開いている開弦と、輪のように閉じている閉弦の2種類があります。 このうち、閉じている閉弦の振動の様子を調べると、その振動が重力を媒介する粒子に対応していることが理論的に分かりました。 これは、重力が時空の歪みそのものであることから、弦が時空そのものを表している可能性を示唆しており、ブラックホールや宇宙全体が弦からできているという、驚くべきアイデアへと繋がっています。超弦理論と高次元の可能性
弦理論に、超対称性という、ボソンとフェルミオンという異なる種類の粒子を関連付ける新しい対称性を加えたものが、超弦理論です。この理論が数学的に矛盾なく成立するためには、私たちが知っている4次元時空(3つの空間と1つの時間)よりも、さらに多くの次元が必要であると予言しています。 具体的には、9次元の空間と1つの時間次元、あるいはM理論という、より高次元の理論では10次元の空間と1つの時間次元、合計11次元の時空の存在が示唆されています。この高次元の考え方は、次回の記事でさらに深く掘り下げていきます。全記事一覧
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