今回は、アインシュタインの一般相対性理論が解き明かした「重力の正体」について、もう一度掘り下げてみたいと思います。ニュートン力学では「万有引力」として扱われていた重力が、相対論ではどのように解釈されるのか、確認していきましょう。
Q1:重力って、一体何なのでしょうか?
私たちは、重力が物体に力を及ぼしていると直感的に考えがちです。しかし、一般相対性理論は、全く異なる見方を提示しました。それは、重力は「時空の曲がり」であるという考え方です。
相対論ノートでも取り上げた、エレベーターの例を思い出してください。エレベーターのロープが切れて自由落下しているとき、その中の観測者は無重力だと感じます。このことから、局所的に見ると、重力は加速運動によって打ち消されるのだということがわかります。
しかし、互いに少し離れた2台のエレベーターが同時に落下する場合、地球の中心に向かって落ちていくため、エレベーター同士が互いに近づいていくように見えます。
これは、重力の影響が広い領域では残っていることを示しています。この性質は、曲がった球面が局所的には平坦に見えるが、広い範囲で見るとその曲がりがわかる、というのと非常に似ていましたね。
つまり、重力は物体に力を及ぼすのではなく、質量を持つ物体が時空そのものを曲げ、その曲がりに沿って物体が動いている、と解釈できるのです。
Q2:ブラックホールと$E=mc^2$の関係は?
ブラックホールは、その重力が非常に強いため、光速でさえ脱出できない天体ですね。
この現象は、私たちが以前学んだ$E=mc^2$という式と密接に関連しています。この式は、エネルギーと質量が等価であることを示しています。
光は質量を持たない唯一の物体ですが、光もエネルギーを持っています。
ブラックホールは、その途方もない質量によって時空を極限まで曲げており、その重力から脱出するためには、光のエネルギーさえも足りない、という状況を作り出しているのです。
つまり、ブラックホールは、$E=mc^2$という方程式が示すエネルギーと質量の等価性の究極の姿であり、質量が持つ重力の強さを極限まで高めた天体だと言えます。
まとめ
今回は、一般相対性理論における重力の核心に迫りました。
重力を単なる「力」ではなく「時空の幾何学」として捉えることで、これまで説明できなかった重力現象の謎が解き明かされました。
参考文献
記事を書くときに、部分的に参照したので載せておきます。
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- 一般相対論入門 改訂版 : [須藤 靖 (著)]
- 第3版 シュッツ 相対論入門 I 特殊相対論 : [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著) ]
- 第3版 シュッツ 相対論入門 II 一般相対論: [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著)]
- 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ 1) [風間 洋一 (著)]
- 基幹講座 物理学 相対論 [田中 貴浩 (著)]
- 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎[James J. Callahan (著), 樋口 三郎 (翻訳)]
- これならわかる工学部で学ぶ数学 新装版: [千葉 逸人]
- 基幹講座 物理学 相対論: [田中 貴浩]
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