今回は、アインシュタイン方程式の最も有名な厳密解である「シュワルツシルト解」に焦点を当て、この解が予言するブラックホールの性質について見ていきましょう。重力と時空の曲がりが極限に達した世界では、一体何が起こるのでしょうか?
Q1:シュワルツシルト解って何ですか?
シュワルツシルト解は、アインシュタイン方程式の厳密解の一つで、中心に質量を持つが電荷も回転もない、静的な球対称の時空を記述するものでしたね。
この解の最も重要な点は、それがブラックホールの存在を予言したことです。シュワルツシルト解には、シュワルツシルト半径($r_g$)という特別な半径が存在します。この半径は、質量$M$を持つ天体に対して以下のように定義されます。
この半径の内側に入ると、重力が非常に強くなり、光でさえ外に脱出することができなくなります。この境界が、一般的にブラックホールの「事象の地平線」と呼ばれているものに相当します。
Q2:ブラックホールに近づくと、何が起こるのでしょうか?
シュワルツシルト解は、ブラックホールに近づく観測者に2つの重要な現象が起こることを予言しています。一つは「重力による時間の遅れ」、もう一つは「重力赤方偏移」です。
まず、時間の遅れです。重力源に近いほど時間の進みは遅くなり、その関係は以下の式で表されましたね。
ここで、$d\tau$は重力源の近くで測った時間の進み、$dt$は遠方で測った時間の進みです。ブラックホールの事象の地平線($r=r_g$)では、右辺がゼロになり、時間が止まって見えるという極端な結果になります。
次に、重力赤方偏移です。重力源の近くで発せられた光は、重力場の影響を受けてエネルギーを失い、遠方の観測者からは振動数が低く、波長が長くなったように見えます。
この現象を「赤方偏移」と呼びます。ブラックホールの重力が極めて強いため、その事象の地平線で発せられた光は、無限に波長が伸びてしまい、観測することができなくなります。
まとめと展望
今回は、シュワルツシルト解が予言するブラックホールの性質、特に重力による時間の遅れと赤方偏移について解説しました。
これらの現象は、一般相対性理論が単なる机上の空論ではなく、極めて強い重力場における現実の物理現象を記述していることを示しています。Q&Aシリーズはこれで一区切りです。
お付き合いくださり、ありがとうございます!
参考文献
記事を書くときに、部分的に参照したので載せておきます。
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- 一般相対論入門 改訂版 : [須藤 靖 (著)]
- 第3版 シュッツ 相対論入門 I 特殊相対論 : [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著) ]
- 第3版 シュッツ 相対論入門 II 一般相対論: [江里口 良治 (翻訳), 二間瀬 敏史 (翻訳), Bernard Schutz (著)]
- 相対性理論入門講義 (現代物理学入門講義シリーズ 1) [風間 洋一 (著)]
- 基幹講座 物理学 相対論 [田中 貴浩 (著)]
- 時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎[James J. Callahan (著), 樋口 三郎 (翻訳)]
- これならわかる工学部で学ぶ数学 新装版: [千葉 逸人]
- 基幹講座 物理学 相対論: [田中 貴浩]
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