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続・物理の全体像:宇宙のインフレーションと統一理論への課題 (6/6)

ゆいにっき勉強会
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6/6

物理の全体像:宇宙のインフレーションと統一理論への課題

【注記】 この記事は、個人的な勉強会で学んだ内容を自分なりに整理した備忘録です。内容に誤りがあるかもしれませんので、お気づきの点がございましたら、コメント等でご指摘いただけますと幸いです。
前回は、古典物理学の限界から生まれた量子力学と、その核心をなす不確定性原理について見てきました。 このミクロな世界を記述する量子力学は、マクロな宇宙を記述する一般相対性理論と、ある点で大きな矛盾を抱えています。今回の最終回では、この矛盾と、それを解決しようとする現代物理学の最前線についてまとめます。
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宇宙論の二つの問題

宇宙の誕生と進化を考えるビッグバン理論には、解決すべきいくつかの問題が残されていました。
  • 地平線問題宇宙背景放射の温度を調べると、宇宙の遠く離れた場所でも温度がほぼ均一であることが分かっています。しかし、ビッグバンからの宇宙の膨張速度を考えると、これらの離れた場所は光速を超えて離れているため、互いに熱的な影響を及ぼし合うことができません。したがって、同じ温度になるはずがないという矛盾が生じます。
  • 平坦性問題: 現在の宇宙は、空間の曲がりがなく、ほぼ平坦であると考えられています。しかし、宇宙がこの平坦な状態にあるためには、ビッグバン直後の宇宙が、信じられないほど正確に平坦でなければなりませんわずかなずれでも、宇宙は急激に収縮するか、逆に急激に拡散してしまうため、この平坦な状態は偶然では説明がつきませんでした。

インフレーション理論による解決

これらの問題を解決するために提唱されたのが、インフレーション理論です。 この理論では、ビッグバンのごく初期(宇宙誕生から$10^{-34}$秒後)に、宇宙がわずかな時間で細胞1個分ほどの大きさから銀河1個分ほどの大きさにまで、指数関数的に急膨張したと考えられています。この超高速の膨張によって、以下の問題が解決されます。
  • 地平線問題の解決インフレーションが起こる前は、宇宙のすべての領域が光速で情報交換できるほど非常に小さかったため、熱的に均一な状態になっていたと考えられます。その後、急激な膨張で遠く離れてしまったために、現在の均一な温度が説明できます。
  • 平坦性問題の解決急激な膨張によって、宇宙のごくわずかな曲がりも引き伸ばされ、平坦な状態になったと考えられます。これは、風船を膨らませると、その表面のわずかな曲がりも、非常に広い範囲で見れば平らに見えるのと同じ原理です。
インフレーションの最初のアイデアは、真空の相転移によって起こるものだと考えられています。 これは、物質が熱せられることで液体から気体に相転移するように、真空自体がエネルギーを放出しながら別の状態へと変化したというものです。 身近な例で考えると、「過冷却」の逆の現象、「過熱」のイメージです。 水を沸騰する温度以上に熱しても、ショックを与えない限り沸騰しない状態があります。これを「過熱状態」と呼びます。 ここに一粒の物質を入れるなどのショックを与えると、一気に沸騰が始まり、潜熱が一気に放出されます。 インフレーションも、これと同じように、空が準安定な状態から一気に本来の安定な状態へと「相転移」することで、膨大なエネルギーが放出されて急激な膨張を引き起こした、というのが最初のアイデアです。

物理学の究極の目標:統一理論

これまで見てきたように、物理学は一般相対性理論(マクロな世界と重力)量子力学(ミクロな世界と3つの力)という二つの大きな柱で成り立っています。 しかし、ブラックホールの特異点やビッグバンの初期のように、両方の理論を同時に適用する必要がある極限的な状況では、これらの理論は互いに矛盾してしまいます。 この矛盾を解決し、宇宙のすべての力を一つの理論で説明しようとする試みが、現代物理学の究極の目標となっています。 この統一理論を完成させるには、量子重力理論を構築する必要があります。超弦理論などがその有力な候補として研究されていますが、まだ完全な形にはなっていません。 この連載を通して、物理学が「なぜ?」という疑問から、私たちの住む宇宙の壮大な姿と、そのまだ見ぬ謎に挑み続けていることが伝われば幸いです。 また知識が整理できたら、もう少し進んだ話も書いていこうと思っています。

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参考文献

記事を書くときに、参照したので載せておきます。
  1. ブラックホールと時空の方程式:15歳からの一般相対論 : [小林 晋平 (著)]
  2. 宇宙の見え方が変わる物理学入門 : [小林 晋平 (著)]
  3. 宇宙を動かす力は何か 日常から観る物理の話 (新潮新書) : [松浦 壮 (著)]
  4. 時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体 (ブルーバックス)[松浦壮 (著) ]
  5. 量子とはなんだろう 宇宙を支配する究極のしくみ (ブルーバックス)  [松浦壮 (著) ]

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