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物理の全体像:時間の最小単位と物理の未来
前回は、時間の流れが一方向である理由や、ホーキングが提唱した虚時間という概念について見てきました。 今回は、この時間の謎をさらに深く掘り下げ、時間が持つかもしれない最小単位について、そして物理学が直面する課題について考察します。時間は離散化されている?
私たちが日常で考える時間は、連続的に流れていくものです。(と少なくても私達は感じているはずです) しかし、弦理論は、空間だけでなく、時間にも最小単位がある可能性を示唆しています。 弦理論では、すべての基本的な粒子は「点」ではなく、非常に小さな1次元の弦でできています。この考え方を拡張すると、空間は「弦」という最小単位でできていて、それ以上分割できないという結論に達します。 相対論では、時間と空間は一体化されていて、切り離すことのできないものだといいます。 なので空間が最小の単位を持つならば、時間だって最小の単位があるはずでは?となるのは自然な着想だと思います。 この考え方でいくと、時間もまた、それ以上分割できない離散的な最小単位(プランク時間と呼ばれる、約$10^{-44}$秒)を持つのかもしれません。もし時間が連続ではなく離散的なものであるとすれば、これまでの物理学の多くの前提が根本から覆されることになります。 例えば、連続的な時間で記述されてきた微分方程式は、新しい形に書き直す必要があるかもしれません。 時間が離散的であるというアイデアは、宇宙の始まりであるビッグバンの特異点問題を解決する上でも役立ちます。 時間が連続していると、特異点のように無限に「尖った」点が出てきてしまいますが、時間に最小単位があれば、それ以上小さくすることができないため、無限の大きさが出てくるのを防ぐことができるのです。物理学が直面する最後の課題
これまで見てきたように、物理学は一般相対性理論と量子力学という二つの大きな柱で成り立っています。 しかし、宇宙の始まりやブラックホールの特異点といった極限的な状況では、この二つの理論はうまく調和しません。その主な理由は、相対論が連続的で滑らかな時空を前提としているのに対し、量子力学は離散的で不確定な世界を描いているからです。 弦理論やループ量子重力理論など、この二つの理論を統合しようとする量子重力理論の構築は、現代物理学の最大の、そして最後の課題となっています。 統一理論が完成すれば、宇宙のすべての力を一つの数式で記述できるようになり、宇宙の始まりから終わりまでを、より深く理解できるかもしれません。 この連載を通して、物理学が「なぜ?」というシンプルな疑問から、宇宙の最も深い謎に挑み続けていることが伝われば幸いです。長い間、お付き合いいただきありがとうございました!全記事一覧
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