2/5
物理の全体像:相対性理論と時空の歪み
前回の記事では、物理学の目的が「予言」であり、そのための強力なツールである「保存則」と「作用」の概念についてまとめました。今回は、物理学を大きく変えた相対性理論が、私たちの日常的な感覚をどのように覆したかについて振り返ります。物理における「相対性」とは
物理学における相対性とは、物体の運動を「ある基準となる視点」から見てどう観測されるかを考えることです。 私たちは普段、地面を静止した絶対的な基準として物体の動きを考えがちですが、実際には地球も自転・公転しており、誰にとっても「絶対的に静止している」基準というものは存在しません。 すべての運動は相対的なものだ、という考え方が相対性理論の出発点になります。 このことは、地球中心の天動説と太陽中心の地動説のどちらが正しいか、という問題にもつながります。現代物理学の視点では、どちらの説にも優劣はなく、単に運動を記述する「座標系の違い」に過ぎないことが分かってきました。光速の不変性
この相対性の考え方を、光の速さに適用したときに大きな矛盾が起こりました。 光の速さ(光速)は秒速約30万キロメートルという驚異的な速さですが、この光速には実験的事実から「誰から見ても常に同じ速さで観測される」という不思議な性質があることが分かっています。 通常の物体であれば、自分が動けば相手の速度は変わって見えます。しかし、光だけは、自分がどれだけ光に近づいたり、離れたりしても、その観測速度は常に一定なのです。 この事実は、かつて物理学者たちが光を伝える媒体として仮定した「エーテル」の存在を否定するものでした。 多くの実験でエーテルは見つからず、アインシュタインは「光速は、どのような観測者から見ても一定である」ということを、一つの物理法則として受け入れました。 ちなみにエーテルを仮定すると、地球がエーテル(の域内)に接触した場合にエーテルの風というものが起こり影響を受けてしまうはずというものがあるのですが、実験ではエーテルの風というのは観測することができなかったそうです。時間の進み方が狂い始める
では、どうして「光速が不変」という、私たちの常識に反する現象が起こるのでしょうか? 速度は定義から「距離÷時間」で決まります。 もし速度が常に一定だとすれば、私たちが普段当たり前だと思っている時間や空間の概念自体が、観測者の運動によって伸縮しなければならない、という結論にたどり着きます。 (速度、距離、時間という3つの条件の中で”速度”が固定されている場合と考えてみてください) この矛盾を解消するために、アインシュタインは時間と空間そのものが観測者の運動によって変化するという、画期的な考えを提唱しました。- 時間の遅れ:高速で動く物体にとっては、時間の進み方が遅くなります。
- 空間の収縮:高速で動く物体は、進行方向の長さが縮んで見えます。
全記事一覧
- 物理の全体像:運動方程式から保存則へ
- 物理の全体像:相対性理論と時空の歪み (今ココ)
- 物理の全体像:次元の考察と重力のモデル化
- 物理の全体像:アインシュタイン方程式とブラックホール
- 物理の全体像:量子力学と未来の物理学
コメント